九尾の狐
Nine Tailed Fox
illust. ゆーこー
彼は早く悪魔の味方にならなかったことを今更に悔やんだ。
悪魔と恋して、悪魔の味方になって、悪魔とともにほろびるのがむしろ自分の本望であったものをと、彼は膝に折り敷いた枯草を掻きむしって遣る瀬もない悔恨の涙にむせんだ。
その熱い涙の玉の光るのを、玉藻はじっと眺めていたが、やがて優しい声で言った。
「お前はそれほどにわたしが恋しいか。人間を捨ててもわたしと一緒に棲みたいか」
「おお、一緒に棲むところあれば、魔道へでも地獄へでもきっとゆく」
――岡本綺堂『玉藻の前』