フラーユ
Floweyu
風に散る桜の木の前で、一人の少女が立ちつくしていた。
振り向いたその眼に涙が光るのを見て、司祭は優しく言った。
「泣くことはない。桜の花は儚く、すぐに散ってしまう。けれどもそれは自然の理……桜は、それで幸せなのだよ」
少女は目をぱちくりさせた。
「……あの、ごめんなさい。あくびが出ただけなの……」
少女は決まり悪そうにうつむき、消えてしまった。司祭はうな垂れた。
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